愛知県額田郡幸田町の歯医者 うおずみ歯科クリニック 歯科医師 院長の魚住 大樹です。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、集中力の低下や日中の眠気など日常生活に影響を及ぼす厄介な症状を引き起こします。治療には内科との連携が重要であり、歯科医院でも適切な対応が可能です。この記事では、睡眠時無呼吸症候群についての基礎知識と、歯科治療における役割、内科との連携について詳しく解説します。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が停止または低下する病状です。主に肥満や扁桃腺肥大、鼻詰まり、アゴの形状などが原因で起こることがあります。多くの患者さんは、睡眠中のいびきや無呼吸のエピソードを指摘されて初めて気づきます。症状としては、夜間頻尿、熟睡感の欠如、日中の過度の眠気、頭痛や集中力の低下などがあります。
呼吸が停止することで低酸素状態が続くと、将来的には心疾患や脳血管障害などのリスクを高めることになります。SASは典型的には男性に多く見られますが、女性やお子さまも発症することがあります。特にお子さまの場合、成長や発達に影響を及ぼすことがありますので、早期発見・早期治療が重要です。
内科的治療として代表的なのがCPAP療法(持続陽圧呼吸装置)です。この装置は睡眠時にマスクを装着して、気道に陽圧をかけ続けることで無呼吸を防ぎます。CPAP療法は、重度の無呼吸の患者さんに効果的とされています。使用継続が必要なため、患者さんの適応や装着感が非常に重要になります。機器の導入費用や維持費も考慮に入れる必要がありますが、多くの保険が適応されるため経済的負担が抑えられることもあります。
CPAP療法の他に、体重管理や生活習慣の改善も内科的治療の一環とされています。特に肥満はSASの大きなリスク要因であるため、栄養指導や運動指導が行われることがあります。また、鼻の通りを良くするための治療や扁桃腺の手術なども行われることがあります。
歯科におけるSASの治療として、口腔内装置(マウスピース)があります。これは、下顎を前方に保持することで気道の閉塞を防ぐ効果を持っています。この方法は特に軽度から中等度の無呼吸症候群に有効で、多くの場合、CPAPほどには煩わしくなく、旅行時など携帯も容易です。
マウスピースの製作費用は数万円から十数万円程度で、保険の適用が可能なケースもあります。そのため、経済的負担は比較的軽減されるでしょう。しかし、適切なフィッティングが重要なため、定期的な調整が必要です。また、装着時の違和感や顎関節への負担が問題になることがあり、使用者の適応度が問われます。
SASの治療には歯科と内科の連携が不可欠です。特に重度のSASの場合はCPAP療法とマウスピースの併用が検討されることがあります。また、歯科的な要因がSASを引き起こしている場合には、これらの治療の前段階として外科的なアプローチが必要になるかもしれません。
多職種での協力により、患者さんそれぞれに適した治療計画を立てることが可能です。定期的なモニタリングとコミュニケーションを通じて、治療の継続性や効果を確保します。こうした連携の中で、患者さん自身が主体的に治療に取り組むことが促進されます。
睡眠時無呼吸症候群は、日常生活に大きな影響を及ぼすのみならず、長期的には重大な健康リスクを伴う病態です。歯科と内科の双方が連携することで、より包括的で個別に適した治療を提供することが可能になります。患者さんご自身のライフスタイルや適応度に合わせて治療を選択することが、最適な結果をもたらすカギとなります。自覚症状がある場合は、一度専門医の診断を受けることをおすすめします。歯科医院でも相談を受け付けていますので、些細な疑問や不安でも遠慮せずにご相談ください。